以前前立腺肥大症と診断されましたが、最近は症状がないため放置しています。前立腺肥大症を放置すると、どうなりますか? 特に前立腺癌が心配です。2(※前回の続きです)
まるごと生活情報 2007年12月22日号掲載
今回は前立腺肥大症の症状と治療に関してお話します。
前回お話したように、前立腺は膀胱の出口を取り囲むようにあるため、これが何らかの原因で肥大(大きくなる)すれば、膀胱の出口が物理的に塞がれ、尿の通り道が狭くなることにより症状が出ます。これを排尿障害と呼び、最も多い症状です。 具体的には、尿を出そうとしてもなかなか出て来ない、出始めても勢いが悪く排尿し終わるのに長く時間が掛かる、排尿し終わってもまだ残った感じがある、等です。 もう一つは蓄尿障害といって、尿をたくさん貯めることができず、普段から尿の回数が多い(頻尿)、あるいはトイレに行こうとすると漏れる(尿失禁)、夜寝てからトイレに起きる(夜間頻尿)などの症状が出現します。 肥大症が進行すると、一度の排尿で貯まっていた尿がすべて出ないで残る(残尿)状態となり、極端な場合、尿閉といって膀胱に貯まった尿がまったく出なくなり、妊婦のようなお腹になることがあります。 この場合、膀胱に管を入れ尿を出す治療も必要となります。長期間残尿がある状態が続けば、腎臓が腫れ(水腎症)いずれ腎機能障害を生じます。 治療の目的は自覚症状を取り除く(軽減する)ことと、腎臓の働きを守ることの2点です。症状があれば必ず治療が必要かといえば、前立腺肥大症は良性疾患ですから、本人がさほど困らず、腎臓が正常であればあえて直ぐ治療をする必要はありません。 しかしながら、排尿がすっきりしない、夜間頻尿で困っている、などの症状があれば泌尿器科専門医を受診し、まず超音波検査で前立腺、膀胱、腎臓をチェックすることをお勧めします(まったく痛みのない検査です)。 私の印象では8割くらいの方は内服薬で症状がかなり改善します 。飲み薬で改善しない場合、手術療法が必要な場合もあります。現在はほとんどお腹を切らない方法で手術をしています。 しかし、手術療法では排尿障害は改善しやすいのですが、蓄尿障害は改善しない場合もあり納得して治療を受ける事が大切です。 次回は前立腺癌についてお話しいたします。