テレビ番組などで、お酒の害と共に適度のお酒は体に良い、と放送されましたが本当なのでしょうか? 体に良いお酒の飲み方があれば教えてください。2(※前回の続きです)
まるごと生活情報 2013年02月23日号掲載
お酒(アルコール)には、食道がんの誘因となる、血圧を上昇させる、中性脂肪を増やす、などの多くの有害作用があります。ただし適度な飲酒は狭心症などの虚血性心疾患、脳梗塞などのリスクが低下するという報告もあります。2回目の今回はアルコールによる肝障害についてお話します。
前回、適度な飲酒はHDL(善玉)コレステロール値の上昇などにより、虚血性心疾患、脳梗塞のリスクが低下するという報告があり、この適度な飲酒量とは、1日平均純アルコールにして約20g程度とされ、これは日本酒で1合弱、ビールでは中びん(500ml)1本分に相当するとお話しました。
しかし、アルコールにはそれ自体や、アルコールが変化してできるアセトアルデヒドが肝臓に対して毒性があり、飲酒と肝障害は明らかな因果関係があります。
アルコールの過剰摂取(1日あたり、日本酒で5合)を1週間続けただけで90%の人はアルコール性脂肪肝になると言われています。ただし2~4週の断酒で脂肪肝は消失します。アルコール性脂肪肝の人が長期にわたり大量飲酒を繰り返すと、その10~20%にアルコール性肝炎を発症します。肝炎は重症化すれば命に関わる状態で、たとえ重症化しなくても長期の大量飲酒はアルコール性肝硬変に至ると言われています。
飲酒習慣のすべてが肝障害を引き起こすわけではありませんが、長期の過剰な飲酒が生活習慣病としてアルコール性肝障害を引き起こす可能性があります。健診などで肝機能異常を指摘された場合、飲酒習慣のある人はまずかかりつけ医にご相談ください。アルコール性肝障害であれば4週間の禁酒により、肝機能検査が正常値に近づきます。
節度のあるお酒の飲み方こそが「酒は百薬の長なり」という中国のことわざに当てはまり、節度のない飲酒は「酒は百害あって一利なし」です。
次回はアルコール依存症を含めたアルコールの害についてお話します。
(参考文献 日本医師会雑誌 アルコール関連障害の現状と対策)